大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 平成3年(行ケ)99号 判決

1 請求の原因1及び2は当事者間に争いがない。

2 そこで、原告主張の本件審決の取消事由について検討する。

(1) 引用商標が、「タオル坊や」の文字よりなり、第17類「タオル、タオル製の被服、タオル製の寝具」を指定商品として、昭和四二年一月一〇日登録出願、昭和四三年一〇月二三日に登録、その後、昭和五四年四月五日と平成元年六月二一日の二回にわたり商標権存続期間の更新登録がなされたものであることは当事者間に争いがなく、成立について当事者間に争いのない甲第二号証によれば、引用商標は、別紙引用商標のとおりの構成からなるものと認められる。

(2) 引用商標が、「タオル」の語と「坊や」の語からなる結合商標であることは明らかであり、「タオル」の語も「坊や」の語も世人一般に極めて親しまれている語であることは当裁判所に顕著である。

引用商標の構成は、別紙引用商標のとおり「タオル坊や」と一連に横書きしてなるものであるから、外観上、引用商標を構成する文字のうち、後半の「坊や」の文字のみが取引者、需要者の注意を引くものではないと認められる。

また、引用商標から生ずる「タオルボーヤ」の称呼は、長音を含む五音節からなり、冗長なものではなく、一気に称呼しやすい語呂のよいものであると認められる。

(3) 他方、成立について当事者間に争いのない乙第一号証ないし乙第三号証の各一ないし三によれば、引用商標の構成中の「タオル」の文字は、「布面に輪奈を出した織物。浴布。タオル地。」及び「タオル地の手拭。」を意味すること、タオル地の織物は手拭だけではなく、湯上がりタオル、肌着、寝巻、足拭、ケープ、夏掛け布団(タオルケツト)等の用途に供されることは一般常識に属することが認められる。

したがつて、引用商標の指定商品の「タオル、タオル製の被服、タオル製の寝具」のうち、冒頭の「タオル」は、タオル地の手拭、バスタオルを指し、後の二つは、タオル地を材料とする被服及び寝具を指すものと解することができる。

以上の点からみて、引用商標を指定商品のうちタオルに使用した場合、引用商標の構成中の「タオル」の文字部分は、商品の普通名称を表示するに過ぎず、また、指定商品のうち「タオル製の被服、タオル製の寝具」について使用した場合、引用商標の構成中の「タオル」の文字部分は、商品の品質、原材料を表示するに過ぎないものと取引者、需要者に理解されるものであるから、いずれも自他商品の識別標識として機能し得ないものと認められる。

これに対し、引用商標の構成中の「坊や」の文字部分は、男児を親しんで言う語として知られ親しまれているもので、「タオル坊や」と一連に読んでみても、「タオル」の文字部分と「坊や」の文字部分は、意味上の連関性もなく、これらが結合されたことにより新たな意味をもつた成語をなすものではないと認められ、観念上「タオル」と「坊や」の部分に分けて認識されることも少なくないと認められる。

してみれば、前記(1)、(2)のような事情を考慮しても、引用商標をその指定商品について使用した場合、これに接する取引者又は需要者は、常に「タオル坊や」と一連不可分のものとして取引に当たる者ばかりではなく、その構成中の「坊や」の文字部分に着目して取引に資する者も少なくないものと認められ、その場合、「坊や」の文字に相応して単に「ボーヤ」と称呼されるものと認められる。

(4) 引用商標中の「タオル」の文字部分が指定商品の普通名称を表示したものとしても、原告が請求の原因3(2)に主張するような不都合があるとはみとめられず、原告の主張は独自の主張であり採用できない。

また、原告の主張する従来の審査の実例も、引用商標について指定商品との関係において「タオル」の文字部分を取り出して、これを識別力がないとする前記の判断を左右するものではない。

(5) したがつて、引用商標から「ボーヤ」の称呼をも生ずるとした本件審決の認定判断は正当であつて、原告主張の違法はない。

3 よつて、その主張の点に認定判断を誤つた違法があることを理由に、本件審決の取消を求める原告の本件請求は理由がないからこれを棄却する。

〔編注〕本件の特許庁における手続の経緯は左のとおりである。

原告は、昭和五六年六月一日、別紙本願商標のとおりの、商標(以下、「本願商標」という。)について、指定商品を第一七類「被服(運動用特殊被服を除く。)、布製身回品(他の類に属するものを除く。)、寝具類(寝台を除く。)」(その後「被服(運動用特殊被服、タオル製の被服を除く)」と補正された。)として、商標登録出願をした(同年商標登録願第四六三〇二号)が昭和五八年一〇月二八日に拒絶査定を受けたので、昭和五八年一一月二八日、これに対し審判の請求をした。

特許庁は、同請求を同年審判第二四一五一号事件として審理した上、平成三年三月一四日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、同年四月二四日原告に送達された。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!